大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和26年(モ)5223号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事實)

被申立人(假處分債權者)は昭和二五年三月二五日、申立人(假處分債務者)に対する建物占有移転禁止(同建物は被申立人所有で、申立人が占有していたもの)の仮処分決定を得たが、申立人に対し本案訴訟を提起しなかつたので、申立人より裁判所に対して起訴命令の申請があり、裁判所は同二六年八月一五日同命令を発したが、被申立人は所定期間内に本案訴訟の提起をしなかつた。そこで、申立人は本件申立において被申立人の起訴期間徒過を理由として右仮処分の取消を求めたのであるが、被申立人は、「前記建物は起訴命令前既に被申立人より訴外Aに売渡し、同人が申立人を被告として建物明渡請求訴訟を提起したものである。しかも同訴訟は昭和二六年四月三〇日第一審において原告たる右Aの勝訴となり、現在申立人において控訴中であるので、かかる場合右Aの提起した右建物明渡の訴は右仮処分の本案訴訟と認むべきである」と主張する。

(判斷)

申立人敗訴。判決は被申立人の主張を容れ、下記の理由で、Aの提起した建物明渡の訴を以て本件仮処分の本案訴訟と認め得るとしている。

「民事訴訟法第七四六条(仮処分については同法第七五六条により準用)において、保全処分債務者の申立により相当の期間を定めて本案訴訟の提起を命じ、この期間の徒過によつて債務者に保全処分取消の申立権を与えたのは、本案訴訟による権利関係の確定を得せしめる途を開くことによつて、暫定的性格を有する保全処分による拘束に対し債務者の正当な権利を保護せんとする趣旨に外ならないところ、本件仮処分の被保全権利については前述の如くAと申立人間の建物明渡等請求事件において審理され、既に第一審判決もなされているのであり、若しこの訴訟において申立人勝訴の判決が確定すれば本件仮処分についても事情の変更を理由としてその取消を求めることができる関係にあつて、本來民事訴訟法第七四六条によつて保護しようとするところの本案訴訟不提起のままに放置されるという不利益は申立人については存しないことが明かである。換言すれば本件仮処分については前示Aからの本件建物明渡請求訴訟を以て民事訴訟法第七四六条にいわゆる本案訴訟の提起があつたものに該当すると見ることができるのであつて、かように解しても仮処分債務者たる申立人から同条の保障する利益を奪うことにならないのみならず、訴訟における当事者の恒定ということを固執せず広く訴訟の承継を認めている我民事訴訟法の建前にも合致するものというべきである。(仮にAからも本件建物について仮処分を得ていてそのために本件仮処分についてその必要がなくなつているとしても、それを主張するには別の方法によるべきであり、これがため本件の結論を左右するに足りない。」

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!